近視
ものを見るしくみについて
- ものを見るしくみ
眼球は、目に映る映像を脳に伝える役割をする感覚器です。カメラにたとえると、角膜と水晶体は“レンズ”、その間にある虹彩は目に入る光の量を調整する“絞り”、眼球の奥にある網膜は“フィルム”の役割をしています。水晶体を支える毛様体筋という筋肉が伸び縮みし、水晶体の厚さを変えてピントを調節しています。網膜に映った映像は、視神経という神経の束を通じて脳に伝わります。
また、目の表面が乾かないよう、まばたきをするたびに涙が出るしくみになっています。涙は、角膜や結膜(目の表面の粘膜)に水分や栄養を補給し、目をうるおして保護する役割をしています。
これらの機能が連動して「ものを見る」ことが可能になります。
正視、近視、遠視について
眼軸の長さで、見え方が変わる
近視にもいくつか種類がありますが、近年のこどもの近視の多くは「眼軸長」と呼ばれる目の奥行きの長さが伸びすぎて、網膜にピントが合わなくなるものです。
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網膜にピタリとピントが合って、クリアな像が結ばれる。
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網膜より手前にピントが合ってしまう。近くは見えるが遠くがぼやけて見えにくい。
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網膜より後ろにピントが合ってしまう。
こどもの遠視は斜視や弱視になる可能性もあり、治療が必要な場合もある。

近視について…遠くのものが見えにくい
網膜より手前にピントが合ってしまう。近くは見えるが遠くがぼやけて見えにくい。

近視には、軸性近視(じくせいきんし)と屈折性近視(くっせつせいきんし)があります。
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眼軸の長さが長すぎる場合
眼軸の長さが長すぎると、遠くを見たときに水晶体を十分薄くしても、網膜上でピントが合いません。網膜の手前でピントが合ってしまいます。
このような近視を軸性近視(じくせいきんし)と呼びます。大部分の近視は軸性近視です。 -
角膜・水晶体の屈折力が強すぎる場合
角膜・水晶体の屈折力が強すぎると、遠くを見たときに網膜上でピントが合いません。網膜の手前でピントが合ってしまいます。
このような近視を屈折性近視(くっせつせいきんし)と呼びます。
また、近視は単純近視と病的近視に大きく分けられます。
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単純近視(学校近視)
遺伝や環境の影響などにより、小学校高学年~中学校くらいで始まる近視を単純近視といいます。病気というより身長や体重と同じ個人差です。在学中に発生することが多いので学校近視ともいわれ、大部分の近視は単純近視です。
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病的近視
ごく一部の近視は、幼児期の段階から始まり進行します。眼軸が異常に長くて近視の度が強いため、メガネをかけてもあまりよく見えるようにはなりません。また、眼球がかなり大きくなっているため、網膜が引き伸ばされて非常に薄くなっており、目をちょっと打っただけで、網膜の中心部がひび割れや出血によって萎縮したり、網膜が眼底から剥がれてくる「網膜剥離(もうまくはくり)」などの症状を起こします。このような近視は病的近視と呼ばれ、発生する原因がまだ不明で、遺伝が関与しているともいわれます。矯正しても幼児が、遠くも近くも見にくくしているようであれば、注意が必要です。
こどもの近視について
近視の多くは「眼軸長(がんじくちょう)」と呼ばれる眼の奥行きの長さが伸びすぎて、網膜にピントが合わなくなるものです。メガネやコンタクトを装用することで、光の屈折が矯正され、網膜にピントが合います。
身長が伸びる時期に、眼軸長も伸びていきます。そのため、成長段階にあるこどもは近視を発症しやすいのです。なるべく近視が進まないようにすることが大切なのです。

近視は年齢があがるにつれて進行することが多く、発症年齢が早いほど、将来、より強い近視になる傾向があります。
また、近視が進みすぎると失明にいたる目の病気(眼疾患)になる可能性も高まるといわれています。
0.2や0.3といった裸眼視力だけでは、目の状態の変化を正確に把握することはできません。眼科では目の屈折状態などを精密な機械で計測して、度数の入ったレンズで見え方を確認しながら度数を決定します。
度数の単位はディオプター(D)を使って表され、近視はマイナス(-)で表示されます。数字が大きいほど、近視が強いことになります。
- 弱度近視
- -0.5D 以上 -3.0D 未満
- 中等度近視
- -3.0D 以上 -6.0D 未満
- 強度近視
- -6.0D 以上
近視の治療について
近視の人の矯正は、メガネやコンタクトレンズを用いて行われるのが一般的です。単純近視の場合はメガネをかければ正常の視力まで矯正できます。メガネやコンタクトレンズを作る場合は、眼科医に目の病気や異常などを検査してもらい、適切なメガネやコンタクトレンズを処方してもらいましょう。
近視の矯正には凹レンズを使います。凹レンズは焦点(ピントが合う点)を遠くにする働きがあり、近視の人が適切な度の凹レンズをかけると、網膜にピントが合って遠くがよく見えるようになります。

メガネについて
近視になったからといって、日常生活に支障をきたさなければ、すぐにメガネをかけなければならないということはありません。黒板の字が見えにくくなるというような不都合が生じてきたらメガネをかけてください。また、メガネを常にかける必要はなく、黒板や遠くを見るときなど必要に応じてかければよいのです。メガネをかけたりはずしたりしても、近視の度が進むようなことはありません。
コンタクトレンズについて
コンタクトレンズは角膜の表面に接触させて用いるレンズで、メガネをかけたくない人に好まれています。左右の視力に差がありすぎてメガネが使えない場合も矯正でき、メガネのように曇ったりせず、視野が広くなるという優れた点があります。しかし、慣れるまでに時間がかかる、異物感がある、角膜を傷つける場合があるといった欠点もあるため、使用するときは眼科医と相談の上、決めましょう。
また、レンズの取り扱いや管理などが大変なので、小学生の間はメガネをかけることをおすすめします。
その他の治療
その他、点眼薬を用いる方法と手術的方法があります。点眼薬は、近視状態が一時的な場合に用いられることがあり、また、手術的方法の場合はその安全性を十分に見極める必要があります。これらの方法で治療するときは、眼科医に納得のいく説明を受けてからがよいでしよう。
点眼薬を用いる治療
点眼薬を用いる治療法は、近視になりかけの偽近視(仮性近視)の時期に行われることがあります。偽近視は近くを長く見続けた結果、毛様体筋が異常に緊張して水晶体が厚くなり、一時的に近視の状態になっていると考えられるときで、目の調節を休ませる点眼薬を用いる場合もあります。
手術について
手術的方法には、目の中に眼内レンズをインプラントする、眼内コンタクトレンズや角膜にレーザーを照射して角膜の屈折力(光の曲がり具合)を微調整し、近視を矯正する、「レーザー角膜内切削形成術(LASIK)」などがあります。治療を受ける場合は、十分説明を聞いて納得してから受けましょう。
病的近視の治療について
病的近視は、現在のところ有効な治療方法がなく、研究が続けられています。網膜剥離や眼底出血などが起こらないように注意し、起きた場合は早急に手術する必要があります。