- ミニウェルとは
- レンズのスペック
- ウェルフュージョン(WELL Fusion)システムとは
- ウェルフュージョン(WELL Fusion)の特徴
- ウェルフュージョン(WELL Fusion)のデメリット
- ミニウェルと他レンズとの比較
- ミニウェルの費用
新しい多焦点眼内レンズの規格として、ウェルフュージョンシステムという光学デザインが導入されました。
通常、白内障手術は1眼ずつ行い、片眼の視力の状態を見てから次にどのような眼内レンズを選択するかを決定します。 一方、ウェルフュージョンでは、相互に補完し合う性能を持つ2つの眼内レンズを1セットとして両眼に挿入します。
このシステムにより、多焦点眼内レンズが持つ特有の欠点をお互いのレンズが補完し合うことで、良好な視力を目指す白内障手術に新たなアプローチが提供されています。
ミニウェルとは
Mini WELL(ミニウェル)とは、SIFI MedTech社から提供されている焦点深度拡張型(EDOF)の多焦点眼内レンズです。
これまでのMini WELL(ミニウェル)に続き、Mini WELL PROXA(ミニウェル プロクサ)が市場に登場し、現在2種類のMini WELL(ミニウェル)が存在します。
多焦点眼内レンズは、メガネの依存度を低減し、白内障と老眼を同時に改善できます。しかし、複雑なレンズ構造のため、ハロー・グレアやコントラスト感度の低下など、光の乱反射による視覚の質の低下といった課題があります。
Mini WELL(ミニウェル)は、光の振り分けを行わずに連続的な焦点深度拡張型(EDOF)を採用しており、比較的コントラスト感度を維持しながらハロー・グレアが少ないという利点があります。
ただし、焦点深度拡張型(EDOF)の眼内レンズには、近方の視力がやや弱くなる傾向があります。そのため、近くの視力が重要な場合はメガネの装着が必要となる可能性があります。このMini WELL(ミニウェル)の欠点を補うために、Mini WELL PROXA(ミニウェル プロクサ)が登場しました。
ハロー・グレアとは
ハローは、光の周りに輪がかかったようにぼやけて見える現象であり、グレアは光がにじんで広がって見える現象です。これらは、光が眼内レンズを通過する際の乱反射が原因とされています。多焦点眼内レンズの場合、光を遠近に振り分けるレンズの複雑な構造がハロー・グレアを起こしやすくします。
焦点深度拡張型(EDOF)
レンズとは
EDOFは、Extended Depth of Focusの略語で、日本語では焦点深度拡張型と呼ばれます。通常の多焦点眼内レンズは、複数の距離にピントを合わせるために光を散乱させる構造を持っていますが、EDOFレンズは光を分散させずに見える範囲を連続的に拡張する構造をしています。その結果、スムーズで自然な視界が得られ、コントラスト感度の低下やハロー・グレアの発生が抑制されるという特長があります。ただし、近くの視力がやや弱いという欠点も存在します。
レンズのスペック
Mini WELL(ミニウェル)
名称 | Mini WELL(ミニウェル) |
---|---|
光学部 デザイン |
焦点深度拡張型(EDOF) |
焦点距離 (ピント) |
40cm~遠方 |
乱視矯正 | ◯ |
ハロー・ グレア |
ほとんどない |
生産国 | イタリア |
メーカー | SIFI MedTech社 |
素材 | Copolymer(親水性と疎水性の共重合体アクリル) |
矯正範囲 | 乱視なし:0~10.0D(1.0D刻み)/10.0~30.0D(0.5D刻み) |
乱視あり | 7.0D~32.0D(0.5D刻み) |
Mini WELL PROXA
(ミニウェル プロクサ)
名称 | Mini WELL PROXA(ミニウェル プロクサ) |
---|---|
光学部 デザイン |
焦点深度拡張型(EDOF) |
焦点距離 (ピント) |
30cm~遠方 |
乱視矯正 | × |
ハロー・ グレア |
ほとんどない |
生産国 | イタリア |
メーカー | SIFI MedTech社 |
素材 | Copolymer(親水性と疎水性の共重合体アクリル) |
矯正範囲 | 乱視なし:0~10.0D(1.0D刻み)/10.0~30.0D(0.5D刻み) |
乱視あり | 7.0D~32.0D(0.5D刻み) |
ウェルフュージョン(WELL Fusion)システムとは
ウェルフュージョン(WELL Fusion)システムは、前述のMini WELLを優位眼に挿入し、Mini WELL PROXA(ミニウェル プロクサ)を非優位眼に挿入することで、お互いの特性を補完する独自の光学システムです。
このシステムでは、老眼の矯正を行うと同時に、距離や光の条件に左右されずにメガネへの依存度を低減させるように設計されています。焦点深度拡張型(EDOF)と多焦点眼内レンズの弱点を克服する新しい多焦点眼内レンズのコンセプトです。
ウェルフュージョン(WELL Fusion)の特徴
ウェルフュージョン(WELL Fusion)システムには大きく3つの特徴があります。
2枚1対の無駄のない
レンズ設計
Mini WELL(ミニウェル)の2つのレンズは、モノビジョン(片目を遠く、もう片方を近くに焦点を合わせる方法)とは異なり、両眼に挿入することが想定されています。そのため、両眼で視界が連続的であり、自然な見え方が実現されます。
焦点深度拡張型 (EDOF)の弱み
- 近方の見え方が弱い
- 術後もメガネの装用が前提となっている
多焦点眼内レンズ
特有の弱み
- ハロー・ グレアの自覚
- コントラス感度の低下
ウェルフュージョン(WELL Fusion)システムでは、先に述べたように、2つのレンズが1組となっています。この設計により、焦点深度拡張型(EDOF)と多焦点眼内レンズの弱点を、お互いのレンズが補完することで克服しています。
Mini WELL(ミニウェル)は主に遠方と中間に最適化されており、一方のMini WELL PROXA(ミニウェル プロクサ)は近方に特化したデザインとなっています。
距離や光条件に左右されない安定した見え方
ウェルフュージョンシステムにおける平均視力は、どの距離においても一貫して高く、視力の差異がないことを示しています。この均一性は、ハローやグレアなどの視覚障害が生じにくいことを意味しています。
また、コントラス感度も優れており、光の条件に左右されることなく見え方が一定です。
ウェルフュージョン(WELL Fusion)のデメリット
ウェルフュージョン(WELL Fusion)は、両眼セットのコンセプトにより、従来の多焦点眼内レンズの弱点を克服しました。しかし、2024年時点では、国内での挿入実績がまだ多くないため、現時点での知見と考えられる欠点について以下に簡単に紹介します。
片方の目の角膜乱視が
少ない必要がある
現在、ミニウェル プロクサ(Mini WELL PROXA)は乱視矯正に対応していないため、両目に強い角膜乱視がある方には適用できません。
実績が少ない
現在、国内でのウェルフュージョン(WELL Fusion)の挿入実績はまだ限られています。
挿入実績が少ないということは、将来的にどのような問題が発生する可能性があるか十分に把握されておらず、十分なデータが得られていないことを意味します。
片目を白内障手術をおこなっている場合には適応外となります
ウェルフュージョン(Well Fusion)は、2つの眼内レンズがセットになった光学システムですので、既に片方の目に白内障手術が施されている場合には適用されません。
ミニウェルと他レンズとの比較
眼内レンズの種類 | ミニウェル* | 3焦点眼内レンズ | 2焦点眼内レンズ | 単焦点眼内レンズ |
---|---|---|---|---|
遠方視力 | ○(連続的で、自然な見え方) | ○ | ○ | ○ |
中間視力 | ○(連続的で、自然な見え方) | ○ | △ | × |
近方視力 | 〇(連続的で、自然な見え方) | ○ | ○ | × |
*ウェルフュージョン(WELL Fusion)システムで、視界が連続的であり、自然な見え方が実現されます。
ミニウェルの費用
内容 | 金額 |
---|---|
乱視なし |
560,000円 |
乱視あり |
600,000円 |